マナナン・マク・リール、海神・魔術師・ティル・ナ・ノーグの王

日本では、『浦島太郎』というさながら楽園のような竜宮城に行って帰ってきたら、何十年も経っていたという昔話がありますよね。ケルト神話にも同様の物語があることを知っていますか？

今回は、そんなケルト神話の竜宮城「ティル・ナ・ノーグ (常若の国)」を治めるマナナン・マク・リールを紹介します。

行けば代償を払うけれど、快楽を味わえる理想郷、あなたなら行きますか？

出典：deviantart

1 マナナン・マク・リール、ケルト神話の海神
2 マナナン・マク・リール、創作作品での知名度は低め？
3 マナナン・マク・リール　まとめ

マナナン・マク・リール、ケルト神話の海神

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マナナン・マク・リールは、ケルト神話に登場する妖精の王です。

海神・リルの息子であり、自身も海を司る神。三本の足を持ち、誰よりも速く走ることがでる、高貴で美しい戦士です。

絶世の美女神ファンズを妻とし、自ら目的地まで進む船と水中でも陸でも風のように走る馬（ないし戦車）を使い、世界中を旅しています。

海を荒らしたり鎮めたりする能力を持つ、水夫と漁師の守護神。

「波立つ海を乗り行く者」として崇拝され、海が荒れるときは「マナナンの妻の髪が投げられている」と表現され、水夫たちは「岬の神様」マナナンに加護を祈ります。

アイルランドとブリテンの間にあるマン島という島は、マナナン・マク・リールに由来し「マナナンの島」という意味を持ちます。マン島のピール城には今でもマナナンの巨大な墓があり、車輪の軸のように放射状に伸びた３本の足が描かれています。

魔術師マナナン・マク・リール

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マナナン・マク・リールは多くの魔術道具を持つ魔術や治癒の神でもあります。

決して壊れない黄金のどんな攻撃も跳ね返す魔法の胸当て、海上を照らす黄金の兜を身に纏います。
姿を消したり自由に変身することができる、彼が魔法を使う際に必ず用いるのが極彩色のマント。このマントを振ることで姿を変えることも、嵐を起こすこともできるうえ、会いたくない相手と縁を切り、二度と出会えなくすることも可能であったとか。
地・水・火・風の四元素を自在に操る杖。
また、振れば美しい音楽を奏で、聞くものを眠りに誘い、どんな人間も一日の間決して目覚めない眠りにつかせることができる杖。
3度偽りを言うと壊れ、3度真実を言うと元に戻る真実の器。
持ち主の思うがままに海の上も陸の上も走る「静波号」という船。
「黄の柄」「赤き投げ槍」と呼ばれる槍。
「小さき怒り」「大いなる怒り」という魔剣。
決して的を外さない十字剣「フラガナッハ」。このフラガラッハは見たものの力を失わせ、剣に誘われるように切り伏せられるという魔法がかけられており、この剣によって斬られた者は決して生き残れないとされています。

このフラガラッハは彼の養子として育てた次代の主神ルーに与えられます。
また、「黄の柄」「赤き投げ槍」と「小さき怒り」「大いなる怒り」は後にフィン・マックールが率いるフィオナ騎士団に与えられています。

ティル・ナ・ノーグの王マナナン・マク・リール

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マナナン・マク・リールは大地の底にあるとも、海の果てにあるともいわれている妖精郷、ティル・ナ・ノーグ (常若の国) の王でもあります。

マナナン・マク・リールが治めるティル・ナ・ノーグは楽園として知られ、ここを訪れたことで有名なのがブリテンの王・ブランです。

ブランはある日、岸辺で美しい娘に「冬も貧しさも悲しさも何もない、マナナン・マク・リールが治める国でずっと楽しく暮らしましょう」と誘われました。仲間と共に娘について行ったブランは、ティル・ナ・ノーグに向かう途中にマナナン・マク・リールと出会います。マナナン・マク・リールが魔法の杖を一振りすると、海が花咲く野原に、魚を羊の群れに、鮭を牛に変えたといいます。

ティル・ナ・ノーグは、色とりどりの豊かな場所で、ブランは楽しく暮らしました。しかし、一か月ほど経った頃、故郷が恋しくなったブランは帰ることを決意しましたが、船から降りて故郷の土を踏んだ瞬間、灰となって消えてしまいました。

また、ティル・ナ・ノーグは、かつてアイルランドを支配していたダーナ神族が人間との戦いに負け、落ち延びた場所としても知られています。

自分の国に住まないかと提案したマナナン・マク・リールに感謝したダーナ神族は、永遠に若さを保つ酒、いくら殺して食べても生き返る豚、人間から姿を隠すフィフ・フィアザ魔術を贈ったといいます。