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ニーベルンゲンの歌、ワーグナー楽劇になった叙事詩。ジークフリートの死

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勇者ジークフリート、Fateシリーズのサーヴァントやグランブルーファンタジーの竜殺しの騎士としてお馴染みです。

神話の中ではシグルズとして語られる大英雄。そして「ニーベルングの指輪」の主人公。

なんとなく聞き覚えのあるようなタイトルは「指輪物語」の元ネタになったワーグナーの楽曲。

今回はその大元、ドイツの叙事詩「ニーベルングの歌」で語られるジークフリート(シグルズ)の物語のご紹介です

指輪の呪いのために迎える英雄の悲劇的な死、そしてその後

 

 

勇者ジークフリート、実は英雄シグルドと同一人物?

『ジークフリートと神々の黄昏』の挿絵、アーサー・ラッカム作

ジークフリート( Siegfried)(ドイツ語)は、北欧神話の中で「戦士の王」と評されるほどの大英雄。

古ノルド語ではシグルズ(Sigurðr)、竜殺しの英雄としてその物語は『ヴォルスンガ・サガ』や『詩のエッダ 』など、北欧の様々な物語で語られており、リヒャルト・ワーグナーの戯曲「ニーベルンゲンの指輪」の主人公でもあります。

 

ニーベルンゲンの歌

アーサー・ラッカム作

『ニーベルンゲんの指輪』の作者はワーグナーですが、『ニーベルンゲンの歌』は作者未詳、13世紀初頭中世ドイツの叙事詩。英雄ジークフリートの非業の死と、ジークフリートの妻のクリームヒルトの復讐劇を描いています

(ちなみにワーグナーの『ニーベルンゲンの指輪』はこれら中世の物語の集大成といえるもの)

 

『ニーベルンゲンの歌』の中でのジークフリート(シグルズ)はネーデルラントの王子、王ジークムントと王妃ジークリントの息子。

ニーベルンゲン族を倒して、財宝と魔法の隠れ蓑タルンカッペ名剣バルムンクを手に入れ、竜を倒します

その竜血を浴びて全身が甲羅のように硬く、いかなる武器でも傷つけられない不死身の体となりますが、菩提樹の葉が張り付いた背中の一点が弱点となってしまいます。

 

ニーべリンゲンの歌 あらすじ 

アーサー・ラッカム作

**ジークフリートの結婚 **

ジークフリートは成人後、ブルグント王グンター(グンテル・グンデル)の妹で名高い美少女であるクリームヒルトの噂を聞き、少女に会うためにブルグントの国を訪れます。

そして求婚。その婚姻を成功させるため、クリームヒルトの兄のグンターと義兄弟となる友情を誓います

そのグンターはイースラント(アイスランド)の女王ブリュンヒルトを慕い、求婚していました。

美しく、けれど女傑であったブリュンヒルトはこれまでの求婚者を尽く武術で打ち負かしてきており、グンターの求婚にも条件を出します。

それは「私を武芸で打ち負かした者の妻となる」というもの。

そこでグンターはジークフリートの助けを求め、ふたりは一計を図ります。

それはジークフリートが魔法の隠れ蓑タルンカッペを着て身を隠し、グンダーを手助けするというもの。

策は成功し、ブリュンヒルトはグンターと結婚。国王の信頼を得たジークフリートも無事クリームヒルトと結婚します。

 

** ジークフリートの暗殺 **

[天井から吊られたグンテル王]ヨハン・ハインリヒ・フュースリー作

けれど、王と王妃の初夜、グンターはブリュンヒルトに抵抗され、帯で天井から吊るされてしまいます。

次の夜、ジークフリートはタルンカッペを使ってブリュンヒルトを組み伏せ、グンターは無事ブリュンヒルトとの床入りを果たします。

その時、ジークフリートはブリュンヒルトの帯と指輪を持ち帰り、クリームヒルトにそれを渡します

 

数年の後、ジークフリートとクリームヒルトとの間にはグンテルという名の王子が誕生。

ふたりはブルグント王国に招かれ、王宮でグンター王と王妃と再会。

クリームヒルトとブリュンヒルトがヴォルムスの大聖堂にどちらが先に入るかを巡って口論にななってしまいます。

ブリュンヒルトがクリームヒルトを臣下の妻だと卑しめ、それに対抗してクリームヒルトが結婚の際にジークフリートが手助けしたことを公の場で暴露。その証拠として自身が持つブリュンヒルトの帯と指輪を差し出します

それ知ったブリュンヒルトはその屈辱に耐えきれず、自室に逃げ戻ってしまいます。

ジークフリートはこのことでブルグント王国の家臣の反感をかうことになり、ブルグント王国の戦士ハゲネは、ジークフリートの暗殺を計画。

 



** ジークフリートの死 **

「ジークフリートの死を悲しむクリームヒルト」ヨハン・ハインリヒ・フュースリー作。

ハゲネは、クリームヒルトから言葉巧みにジークフリートの弱点を聞き出します。

そして、ジークフリートを狩猟大会に誘い、ジークフリートが泉で喉の乾きを癒しているすきに不意討ち。投槍でジークフリートの背中を貫き、暗殺。ジークフリートはハゲネとブルグントを呪って死亡

ハゲネはジークフリートの死体をクリームヒルトの寝室の外に投げ捨てます。

翌朝、ジークフリートの亡骸を見たクリームヒルトは、弱点の背中が貫かれている事からハゲネが夫を殺したのだと気づき、夫の復讐を誓います。

 

** クリームヒルトの復讐 **

「クリームヒルトとグンター」ヨハン・ハインリヒ・フュースリー 作

やがて未亡人となったクリームヒルトは、東ヨーロッパの遊牧民であるフン族の王エッツェルから求婚されることになります。

クリームヒルトはジークフリートの仇を討つためにエッツェルとの再婚を承諾

再婚の後数年を経て、クリームヒルトは現夫エッツェルに、ブルグントの人々を自国へ招待させます。

クリームヒルトの復讐を疑うハゲネは、招待を受けることを反対しますが、クリームヒルトの兄グンテルは1000人の使節団を率い、フン族の国を訪れることになります。

クリームヒルトは当時、フン族を訪れていた黒海北岸に定住する東ゴート族の王・勇者ディートリッヒに復讐に助力するように願いますが、ディートリッヒはこれを拒否。

 

旅の途中、ハゲネはライン川の精霊ローレライから「1人を除き、全員が死ぬ」という不吉な予言を聞きます。

また勇者ディートリッヒも、クリームヒルトが復讐を企てていることを使節団に警告します。

クリームヒルトは夫エッツェルの弟ブレーデリンを味方につけ、歓迎の宴で使節団を襲撃。

この時ハゲネは、宴席にいた幼い王子を斬り殺してしまいます。

ブルグント国とフン族は敵対し、凄惨な殺し合いが始まります

死闘の中、敵味方双方の兵士たちは次々と討ち死にし、ブルグント国の生き残りはグンテルとハゲネの二人だけとなってしまいます。

そして、ハゲネとグンテルを生け捕りになり、地下牢に拘束されます。

 

** 復讐劇の終焉 **

「グンテルの首をハゲネに見せ付けるクリームヒルト」ヨハン・ハインリヒ・フュースリー作。

リームヒルトはハゲネに、命を助ける代わりにジークフリートの遺したニーベルンゲンの財宝を渡すよう交渉。けれどハゲネはそれを拒絶。

クリームヒルトは兄グンテルを斬首、生首をハゲネに見せつけます

ハゲネがそれでも財宝のありかを明かすのを拒んだため、クリームヒルトはジークフリートの形見の剣・バルムンクでハゲネを斬殺。

東ゴート族の騎士ヒルデブラントは、無抵抗の勇士への無残な仕打ちに激怒し、クリームヒルトを斬殺

残されたクリームヒルトの夫エッツェルと東ゴート族の王ディートリッヒが悲嘆に暮れる姿で激しい復讐劇の幕が閉じます。

 

 

英霊になる、騎士になる、勇者ジークフリート

Fateシリーズのひとつである聖杯大戦を描いた「Fate/Apocryphaそれぞれの野望と刃が交錯する中、ジークフリートはゴルドによって召喚された黒陣営のマスターとして登場。生前の伝説通り、背中が唯一の弱点です。

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グランブルーファンタジー」のジークフリートは真竜ファフニールを倒した「竜殺し」の異名で恐れられる元黒竜騎士団団長。『救国の忠騎士』に登場しています。

現白竜騎士団団長ランスロットの師。ここぞという時に颯爽と現れる頼もしい存在。

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ジークフリート まとめ

『ジークフリートと神々の黄昏』の挿絵、アーサー・ラッカム作

「ニーベルンゲンの歌」の物語はジークフリートよりもクリームヒルトの物語という印象を受けます。

で、ここで、女の執念は恐ろしいと結論付けても良いのですが、執念深いのは女だけの特徴ではないとも思います。

つまりは愛情の深さ。良いか悪いかは別として、これだけ一人の女性に愛されるジークフリートはさぞ魅力的な男性だったのだろうと思います。

 

 

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