ヴァイキングをはじめとしたゲルマンの戦士は、非常に勇敢でした。
それは、「彼らが死を恐れなかった」から。これが、彼らが強くあった理由のひとつでしょう。ならば、何故、ゲルマンの戦士たちは死を恐怖の対象と思わなかったのでしょうか。
それは、死後、エインヘリャルという魂になり、ゲルマン神話の主神であるオーディンの館・ヴァルハラに迎えられることが栄誉とされたからなのです。
今回は、そんなエインヘリャルについてご紹介。当時のゲルマン戦士の死生観や考え方が分かるかも
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選ばれた英雄の魂・エインヘリャル
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エインヘリャルとは、ゲルマン神話に登場する戦死した戦士の魂のことです。
ゲルマン神話の神々は、来るべき終末・ラグナロクで巨人族との戦争を宿命づけられており、その時に戦士として戦うのがエインヘリャル。主神・オーディンは、巨人族に対抗するために強い戦士を欲しており、地上で戦争が起こると、戦乙女・ワルキューレを派遣し、戦場で勇敢な戦いぶりを見せた戦士を見定めさせました。
ワルキューレに選ばれた戦士は、死後、オーディンの宮殿・ヴァルハラに集められ、エインヘリャルとして歓迎されました。エインヘリャルはラグナロクに向けて、毎日、夜明けから朝食まで戦闘訓練を行い、戦士としての腕を磨きます。
そして、朝食の時間になると、戦闘訓練で死んだ者は復活、傷ついた者は回復し、ワルキューレの給仕のもと、ヴァルハラで盛大な宴が催されました。
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ヴァルハラには、はちみつ酒の乳を流すヘイズルーンというヤギがおり、このはちみつ酒とビールがエインヘリャルの主な飲み物になりました。また、同じくヴァルハラには何度料理されても夕方には元に戻るイノシシ・セーフリームニルがおり、料理人・アンドフリームニルがこれを大鍋・エルドフリームニルで煮てエインヘリャルに振る舞いました。
エインヘリャルは、この宴で活力を得て、翌朝になると再び戦闘訓練を行ったといいます。
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ゲルマン神話のエッダのひとつ『ギュルヴィたぶらかし』では、エインヘリャルがラグナロクが行われる地・ヴィーグリーズに向かって進軍する様子が描かれています。しかし、「巨人族の誰と戦った」など、特定の敵と戦う逸話はありません。
ヴァイキングなどのゲルマン戦士の間では、死後、エインヘリャルとしてヴァルハラに迎えられることが理想とされました。そのため、戦場で死を恐れることなく戦うことができたといいます。
このように、勇敢な戦士の代表格であるエインヘリャルですが、実はあまり者という説も存在しています。
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愛の女神・フレイヤは、オーディンと戦死者を平等に分け合う権利を持っていました。フレイヤは戦争が起こるとワルキューレを率いて戦死者を自身の宮殿・フォールクヴァングに運び、セスルームニルという大広間で勇敢な戦士を選び取ります。そこで、選ばれなかった戦士がヴァルハラに迎えられました。
エインヘリャルが最強で勇敢な戦士なのか、はたまた、あまり者であったのか、どちらなのかは確定できませんが、オーディンのためにラグナロクに向けて日々鍛錬していることは確かなことです。
原典からアイドルまで、たくさんのエインヘリャル
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リズムゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ」では、アイドルたちのユニット名として登場。エインヘリャルの別表記であるアインフェリアの名前です。「生存本能ヴァルキュリア」という曲を力強く歌い上げます。
ゲーム「ヴァルキリープロファイル」では、メインキャラクターとして登場。本作がワルキューレを主人公としたゲームであり、彼女たちに選別され、戦闘要員として共に戦います。
エインヘリャル まとめ
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現代日本人は、「死後は天国に行ってのんびり暮らしたい」というのが大半の考えのようにも思えますが、古代のゲルマン戦士は「死後も戦士として戦うことこそ至上」と考えたために、戦場で勇敢に敵と戦うことができたんですね。
死を恐れずに戦うゲルマン戦士は、敵からすれば、さぞ恐ろしく見えたのかもしれません。