北欧神話の最高神・オーディーンの槍として知られるグングニールは、さまざまなゲームやコミック、アニメーションなどに登場します。
そのグングニールに秘められた「永遠に解決されない謎」とは何?
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グングニールの槍、「最も有名な武器」のひとつ
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グングニール(またはグングニル)の槍といえば、北欧神話『エッダ』の主神であるオーディーンが持つ武器として有名。ゲームやアニメなどの世界での扱いも破格です。
グングニールの場合、武器そのものとして登場する場合も多いのですが、あまりに有名なその名を借りて、槍をイメージさせるスキルやアイテムの名称として登場する場合も多いのです。
『ファイナルファンタジー』シリーズや『ファイアーエンブレム』のような定番ゲームはもちろん、パズドラの「オーディーンシリーズ」、東方シリーズの人気キャラ「ミリア・スカーレット」のスペルカードにまで登場しています。しかも多くの場合、その能力はチート級。まさに破格の扱いです
グングニールの槍、真の主人はだれ?
「槍」と言っても、グングニールの槍は投げ槍です。そしてその特性は、投げると必ず獲物を貫き、また持ち主の手元に戻ってくるという、とんでもないものです。
英雄の武器が投げ槍というのは珍しいかと思いますが、これは一説には、オーディンを神として崇めた人々は戦いを行うとき、戦勝を祈願するために指揮官が敵軍の頭越しに槍を投げたという風習に由来するものであるとも言われています(『アイスランド・サガ』には、そんな戦いの情景が描かれています)。
ところで、『エッダ』の記述によると、この槍は元々悪神ロキがいたずらの償いとしてドワーフの鍛冶屋に依頼して、オーディーンに捧げるために造らせたものとも言われています。いわばオーディーンのための専用武器なのです。
そうなると、ひとつ疑問が発生します。オーディーン以外の者がこの「持ち主の元に戻る」槍を投げたとき、グングニールはオーディーンと槍を投げた者、どちらを持ち主と認めるのでしょうか? 『エッダ』にはオーディーンがグングニールと思われる槍を人間に貸して使わせる場面が描かれていますが、このとき槍が誰の手元に戻ったのかについては描かれていません。
なら、例えば誰かがグングニールを奪ってオーディーンに投げつけたら、槍はオーディーンを貫くのでしょうか? そして、誰の手元に戻るのでしょうか?
「謎」は謎のままだからこそ神秘的
槍はオーディーン以外の持ち主を認めるのか? 神話に答は書かれていません。ラグナロク(神々と悪神・魔物らの最終戦争)のとき、グングニールの槍はオーディーンと共に巨狼フェンリルに飲み込まれ、主と運命を共にしたのです。
永遠に答が出ない謎を残しているからこそ、人はグングニールに惹かれるのかもしれません。
1999年刊行 谷口 幸雄編集