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シューシュポス、死すべきものから死を奪う。「シューシュポスの岩」とは

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シューシュポス-1

不条理文学の代表的な小説家、カミュの随筆『シシューポスの神話』を知っていますか?

この随筆は、生前に神々を愚弄したため、死後、理不尽な罰を受け続けることになったギリシャ神話の英雄・シューシュポスを寓しています。

今回は、そのような不条理な英雄・シューシュポスを紹介します。

画像出典:pinterest


永遠に岩を転がし続けるシューシュポスとは

シューシュポス-2

出典:ウィキペディア

シューシュポスは、ギリシャ神話に登場する英雄です。

古代ギリシャ人の祖であるといわれるヘレンの息子・アイオロスとエナレテーの息子です。

ギリシャ神話で最も狡猾で良心に欠けた人間だとされており、シューシュポスにまつわる多くの神話が彼の計略に関するエピソードになっています。古代ギリシャ有数の都市・コリントスの建国者としても有名な人物です。

まず、シューシュポスの賢さを表すエピソードをひとつ。

シューシュポスと家畜泥棒

シューシュポスがコリントスに居をかまえていた頃、近くにはヘルメスの息子で盗みの名人といわれていた、アウトリュコスが住んでいました。アウトリュコスは、度々家畜泥棒を行い、人々を困らせていました。

しかし、彼はヘルメスから盗んだものを別のものの姿に変える力を授かっており、誰が盗んだか分からないようにして罪を逃れていました。

何度か被害にあったシューシュポスは、自分の家畜の蹄に「SS」という印を刻みます。それを知らずに家畜を盗んだアウトリュコスは、翌朝、シューシュポスに印を見せられ、ついにやり込められてしまいます。

また、その夜、シューシュポスはケパレーニア人の領主・ラエルテスの許嫁に定められていたアウトリュコスの娘・アンティクレイアと密通しました。こうして生まれたのが、『オデュッセイア』の主人公・オデュッセウスです。

シューシュポス-3

出典:ウィキペディア

ホメロスの詩では、オデュッセウスの父はラエルテスですが、悲劇詩人の間では、本当の父はシューシュポスだと語り継がれてきました

デュッセウスの人並みはずれた知恵は、シューシュポスからの遺伝なのですね。

シューシュポスとゼウスの誘拐

シューシュポスはある日、ゼウスが河神・アソポスの娘であるアイギナをさらう場面を見かけます。娘を探すアソポスにシューシュポスは、コリントスの砦に泉を湧かしてもらうことを条件にアイギナを誘拐した犯人の名前を明らかにしました。

ちなみに、この泉はペイレーネーの泉といい、キマイラ退治をしたベレロポーンがペガサスをならした場所としても有名です。

シューシュポスの岩

シューシュポス-4

出典:pinterest

密告に激怒したゼウスは、死の神・タナトスにシューシュポスを捕らえるように命じます。

しかし、賢いシューシュポスは、自身をつなぐ鎖を持ってきたタナトスに「鎖の使い方を教えてくれ」と頼み、逆にタナトスを鎖でつないでしまいました。

死」の概念そのものであるタナトスがシューシュポスの家から動けなくなると、死ぬべきはずの人間が死から免れることになります。これに困ったのが、軍神・アレスです。自分の権利を侵害されることを恐れたアレスは、タナトスを解放しました。

追跡を再開したタナトスは、シューシュポスを捕らえたものの、シューシュポスが妻に「私を埋葬しないでくれ」と頼み、冥界に連れて行かれても平気なようにしたため、タナトスはゼウスの命令を完全に遂行できなくなったとか。

一方、冥界に連れて行かれたシューシュポスは、「埋葬してくれない妻の不義理を罰したいから、しばらくの間生き返りたい」という名目でペルセポネに頼みます。こうして、地上に戻ったシューシュポスは、ペルセポネとの約束を反故にし、長寿を全うしました

シューシュポス-52度も神々を欺いたシューシュポスは、死後、冥府のさらに下にある奈落・タルタロスに連れて行かれ、永遠の罰を受けることになりました。

巨大な岩を山の上まで転がさなければならないのですが、あと少しで山頂に届くというところで岩は転がり落ちてしまうのです。この苦行は永久に続き、決して終わることはありません

シューシュポスの苦行は、日本神話の賽の河原と同様に、「徒労」を意味する語として伝わっています。また、後にタルタロスの永遠の責め苦の代表例にもなりました。過度の思い上がりやうぬぼれ、神々への不敬な行い (ヒュブリス) は、神々の権威によって罰せられるのです。

出典:ウィキペディア

他には、沼の上にある木に吊るされて沼の水を飲もうとするも、口に含もうとした瞬間に水が引いてしまうため、永遠の飢えと渇きに苦しむことになったタンタロス、火が燃え盛る車輪にしばりつけられ、永遠に回転することになったイクシオン、はりつけにされ、生きながら肝臓をワシに食べられることになったプロメテウス (3万年後、ヘラクレスに救出される) などの例があります。


シューシュポス、創作作品では岩とセット

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出典:store.steampowered

ゲーム「ROCK OF AGES」は、岩を転がすことに嫌気がさしたシューシュポスが「山頂から岩を転がし続ければ、扉を壊して脱出できるのでは?」と考え、岩を転がしながら世界をめぐるというコンセプト。プレイヤーはシューシュポスとなり、岩を操作します。

ゲーム「ワッフゥゥゥ! シーシュポス」は、斜面から球を転げ落ちないように注意しつつ運ぶというもの。「シューシュポスの岩」がテーマになっています。


図説 ギリシア・ローマ神話文化事典

シューシュポス まとめ

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確かに、ペルセポネを欺いたりはしたものの、元はといえばゼウスの浮気が原因。

自分にとって最善の行動をしただけなのに、それで、永遠の苦行を強いられるというのはシューシュポスが可哀想に思います。

善も悪も超越するほど、神々は偉大ということなのでしょうか。


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