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ヒュドラ、ヘラクレスに倒される9つの首を持つ大蛇

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ギリシャ神話最大の英雄、ヘラクレス。12の試練などで彩られる、その英雄譚をご存じの方も多いことでしょう。

しかし、彼の輝かしい生涯はヒュドラなしでは語れません。

9つの首を持ち、“不死殺しの毒”で猛威をふるったこの怪物は、一体どのような存在だったのでしょうか。

今回は、大英雄に討ち果たされながらも、ギリシャ神話に爪痕を残し続けた怪物・ヒュドラについてご紹介します。

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ヒュドラ、世界最強の猛毒を持つ多頭竜

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ヒュドラの平凡ならざる出自については、古代ギリシャの詩人ヘーシオドスの『神統記』に記載があります。

父は最高神ゼウスすら追い詰めた、ギリシャ神話最強の怪物・テュポン。母は怪物達の母と呼ばれる、翼をもつ半人半蛇・エキドナ。ケルベロスやスフィンクス、キマイラ、ラードーン、ネメアーの獅子などを兄弟に持ちます。アポロド―ロスによれば、父母、テュポンとエキドナは奈落タルタロスと地母神・ガイアの子。ヒュドラは原初の神々の血を引く怪物です。

誕生後は、ヘラクレスへの恨みを持つ女神・ヘラの手で育てられたと伝えられ、このときからすでにヘラクレスとの因縁があったと言えるでしょう。

9つの首を持つ大蛇として表されることの多いヒュドラですが、伝承によっては100もの首を持つと言われたり、足と翼を持つ姿で描かれたりなど、その容姿には諸説あります。

触れただけで全ての生き物を絶命させる世界最強の猛毒を有し、1つの首を切り落とすと傷口から新たに2つの頭が生じるという再生能力に加え、中央の首は不死という驚異の存在。

名前はギリシャ語で水蛇を意味するhydros、不老不死とも言われる淡水生物・ヒドラや水素(hydrogen)の名の由来ともなりました。

 

ヒュドラとヘラクレス、レルネーの死闘

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ギリシャ神話の原典と名高いアポロドーロスの『ビブリオテーケー』には、ヒュドラとヘラクレスの激しい戦いが記されています。

ヒュドラがたびたび人里を荒らしているという話を聞きつけたミュケナイ王・エウリュステウスは、10の試練を遂行中だったヘラクレスに、2つ目の試練としてこの怪物の退治を命じました。

甥イオラオスを従者として引き連れたヘラクレスは、毒への対策として、口と鼻を布で覆いつつヒュドラの住むレルネーの沼地へと向かいます。

沼地にて対峙することとなった両者ですが、その力量差は一目瞭然。

いくら傷を負ってもヒュドラが弱体化することはなく、首が倒されるごとにこの怪物はより強力で凶悪な存在へと進化していきました。

初めは善戦していたヘラクレスでしたが、そんな彼をヒュドラは、持ち前の再生力と猛毒で苦戦へと追いやります

しかし、戦いのさなか甥・イオラオスが、燃えた木で傷口を焼くと再生を防げると気付いたことで形成は逆転します。

そしてついに、最後に残った不死身の首も大岩の下敷きとなり、ヒュドラは封印され、この戦いは幕を閉じます。

ちなみに、この戦いで加勢にやってきたヒュドラの兄弟、巨大蟹・カルキノスもヘラクレスによって退治されており、ヘラの手によって天に上げられた両者はそれぞれうみへび座とかに座になり、現在も夜空に輝いています。

 

ヘラクレスを倒すヒュドラの猛毒

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ヒュドラ討伐を果たしたヘラクレスはアテナの助言を受け、ヒュドラの猛毒を自分の矢に塗り、その後の戦いに用いるようになります。この毒矢がもたらした功績は大きく、ステュムパリデスの怪鳥を追い払うという6つ目の試練ではその多くを討伐し、巨人ゲリュオンを射殺することで、彼の牛を奪い取る10番目の試練を成功へと導きました。

このように彼の武器として大きく貢献したヒュドラの毒。しかしその一方で、この猛毒はヘラクレスに災厄をもたらすようになります。

4つ目の試練であるエリュマントスの猪を生け捕りする際、ヘラクレスは敵に矢を放ち、その矢は相手を貫通し、自身の師である賢者・ケイロンにもあたってしまいます。

解毒できないヒュドラの毒に不死の肉体を持つケイロンは幾度となく蘇り、そのたびに毒と死の責め苦を味わうことになりました。苦痛に耐えかねたケイロンはゼウスに嘆願し、プロメテウスに不死を譲る形で安らかな死を迎えます

 

そして数年後、12の試練を達成したヘラクレスを、同じ苦痛が襲います。

ネッソスによって妻・ディアネイラが強姦されかけているのを見たヘラクレスは、自慢の毒矢でこのケンタウルスを射殺。 ネッソスは死の間際、自分の血が媚薬であり、衣服に塗ることで夫の心変わりを防げるとディアネイラに告げました。

ディアネイラは言われた通り、ネッソスの血を塗った衣服を夫・ヘラクレスに渡します。しかしこの血には、ネッソスの受けたヒュドラの毒が混ざっていました。

ヘラクレスがそれを着るやいなや、その体は猛毒によって焼けただれ、彼は苦しみにのたうち回ります

不死であった彼は、自分が師・ケイロンと同じ末路を辿ることを察し、自らを生きたまま火葬するという壮絶な最期を遂げました。


多くの敵を演じるヒュドラ

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たくさんの頭を持つというインパクトからか、ヒュドラは多くの作品に登場します。

ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』、『Fate/Grand Order』など、その多くがいわゆる雑魚キャラで神話における本来の力は発揮されていないようです。

 

2009年公開、“人間狩り”を楽しむセレブと獲物となった犯罪者たちの戦いを描く、映画『ヒドラ』では、3つの頭を持つ獰猛な蛇としてあらわれ、双方を喰らい尽くしていきます。B級映画として賛否両論分かれる本作ですが、怪物としての特性が誇張されたヒュドラの姿は多くの観客に印象に残ったことでしょう。

 


同じくギリシャ神話をコンセプトにした映画『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』では、真珠を守る水蛇として主人公たちの前に立ちはだかります。

CGによる演出技術は迫力満点で、神話上のヒュドラの姿を思う存分楽しむことができます。


ヒュドラ まとめ

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大英雄・ヘラクレスの英雄譚に、光と影をもたらした怪物・ヒュドラ。

神話には多くの怪物が登場しますが、自分で自分の仇を討つという離れ業をやってのけられるものはごくわずかでしょう。

ギリシャ神話に名をとどろかすその存在は、夜空を飾りながらいまなお語り継がれています。


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