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「八百比丘尼」(やおびくに) の悲劇、人魚の肉は不老不死になれる?

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漫画・アニメ・映画などのフィクションでは、不老不死のキャラクターがよく登場しますよね。歴史上、秦の始皇帝、メソポタミア神話の英雄・ギルガメッシュなど、実際に不老不死を求めた人物は多く存在します。

それだけ、不老不死は魅力的であり、過去から現在に渡って人々を魅了し続けてきたということ。

今回は、そんな不老不死にまつわる日本の民話をご紹介。

人魚の肉を食べたら、不老不死の身体になっちゃった尼さんのお話、どうぞご覧あれ!

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不老不死の女・八百比丘尼

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八百比丘尼は、人魚の肉を食べたことで不老不死になり、800歳まで生きた後に入定 (仏教で煩悩を捨て去り、無我の境地に入ること) したという尼僧です。

入定するまで、さまざまな地を渡り歩いたので、全国各地に八百比丘尼が訪れたという伝説が残っています。

八百比丘尼伝説

出典:ええやん若狭の國

飛鳥時代、若狭 (現在の福井県) の漁村に住んでいるお金持ちの長者は、村に住み着いていた見知らぬ男から夕食に招かれます。

長者が男の家に行くと、なんとそこは大豪邸。

圧倒されつつも家の中に入った長者ですが、食堂に通される前、偶然台所で料理人が調理しているところ見てしまいます。まな板の上には人魚のような不思議な生き物がおり、実際にご馳走として、その生き物を調理した肉料理が出てきました

気味悪がった長者は「お土産として持ち帰りたい」と言って難を逃れ、肉を家に持って帰ります。

肉から香るおいしそうな匂いに、長者の娘は彼の目を盗んで、肉を食べてしまいました。それ以降、娘は若返ったように美しくなり、まったく老いることがなくなりました

娘は、地元の若者と結婚しましたが、死に別れます。別の男と再婚、再々婚しますが、娘は不老不死になったため、いつも夫に先立たれてしまいました。

絶望した娘は出家し、尼となって全国をめぐりました。椿が好きだった彼女は各地に植え、自分が訪れた証を残したといいます。

800歳になったとき、若狭に戻ってきた娘は洞窟にこもり、入定しました

彼女が入定したという洞窟は、小浜市の空印寺と伝わっており、今でも洞窟は残っています。洞窟の前には、彼女が植えたという椿が元気に咲き誇っています。

なぜ、不老不死になった?

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人魚の肉を食べて不老不死になった八百比丘尼ですが、「なんで人魚の肉を食べて不老不死に?」という疑問が残りますよね。

八百比丘尼伝説にはいくつかのバリエーションがあり、見知らぬ男の屋敷が竜宮城や異界にあるパターンがあります。その場合、出される食事はこの世のものでないのです。

ギリシャ神話のペルセポネの冥府下り話 (冥府の食べ物を食べたため、地上に帰れなくなった)、日本神話のイザナミの黄泉戸喫 (ヨモツヘグイ) 話 (イザナギが死んだイザナミを黄泉の国から救い出そうとするが、イザナミは黄泉の国の食べ物を食べていたため、地上に帰れなくなった) など、世界中に「異界の食べ物を食べると、戻れなくなる」という話が伝わっています。

八百比丘尼は、人魚という異界の食べ物を食べたため、自らも異界の存在になってしまったのではないでしょうか。



不可思議な存在としておなじみ

2017年に木村拓哉さん主演で実写映画化もされた、漫画『無限の住人』では、主人公を不老不死にした人物として登場します。ヒロインに主人公を紹介したのも八百比丘尼で、物語の元凶として描かれています。

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手塚治虫の漫画『火の鳥 異形編』では、男装した主人公の父親の病気を治す存在として出ています。父親を嫌う主人公は、八百比丘尼を殺そうとするのですが……?

まとめ

不老不死は人類の永遠の憧れですが、夫や身内に先立たれたり、決してよいことばかりではありませんよね。

ちなみに、八百比丘尼が洞窟に入る前に植えた椿を指差し、「この椿が枯れたら、私が死んだと思ってください」と言ったそうです。その椿は、今でも美しく咲き誇っているとのこと。

洞窟の奥底には、今でも彼女がいるかもしれませんね。

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