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一寸法師、御伽草子の中では意外な展開の昔話、そのあらすじ

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一寸法師は「日本昔ばなし」で語られる有名な物語のひとつ。小人に生まれた青年が鬼を退治してお姫様と結ばれるハッピーエンドなお話をイメージします。

けれど、実際の御伽草子にある「一寸法師」はもっとシリアスな説話。

ファンタジーとは言い難い、一寸法師の実像とは

 


 

一寸法師、小人に生まれた法師のサクセスストーリー

一寸法師は日本の昔話。
鎌倉時代から江戸時代にかけて作られた物語集『御伽草子』にある23編の中の一話です。

「背丈1寸の法師が,お椀の舟,箸の櫂で上京。

鬼ヶ島で鬼退治。手に入れた打ち出の小槌で背丈を伸ばし,金銀を得て凱旋。

中納言となって奉公先の姫と結ばれ、幸福に暮す」物語です。

桃太郎や金太郎と並び、幼い頃の少年に語り聞かせるハッピーエンドな物語をイメージします

けれど「御伽草子」にある「一寸法師」は決して夢物語ばかりではない、むしろ疎まれ、面白がられた不具の子が成り上がるまでの物語を語っています

【原文】

中ごろのことなるに、津の国難波の里に、おほぢとうばと侍り。うば四十に及ぶまで、子のなきことを悲しみ、住吉に参り、なき子を祈り申すに、大明神あはれと思し召して、四十一と申すに、ただならずなりぬれば、おほぢ喜び限りなし。やがて十月と申すに、いつくしき男子をまうけけり。

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「一寸法師」あらすじ

一寸法師の誕生

昔、大阪の難波という所におほぢとうばの老夫婦がいました。うばが40歳になるまで子供に恵まれず、住吉神社にお参りし、授かるよう祈願しました。

大明神はそれを哀れと思い、うば41歳の時にめでたく懐妊。

やがて十月がたち、無事美しい男子を出産しました。

けれど生まれた子はせいぜい一寸(3cm)ほどの身長しかなかったため、一寸法師と名付けられました

年月が経ち、一寸法師12〜13歳になる頃、けれど全く大きさは変わらず、夫婦はもしや一寸法師は人ならざるものなのかと思い悩むようになります。

「これは尋常ではない、あれは化け物に違いない。いったいどんな報いで住吉さんはあんな子を授けたのか、情けない。あの様な者はどこかへやってしまおう」と話し合うようになります。

一寸法師はそれを聞いて、親にこんなに疎まれることが悔しく、追い出されるより自ら出て行くことを決意

うばに刀がわりの針と船にするお椀をもらい、都に向けて旅立ちます

 

旅立ち

一寸法師は鳥羽に辿り着き、都にのぼり、三条の宰相殿の邸を訪れます。

主人の宰相殿はこれまで見たこともない小さな人間を見て驚き、そして面白いと興味を持ちます

こうして一寸法師は宰相殿の邸で暮らすことになります。

この宰相殿には美しい姫君がいました。一寸法師は姫君に恋い焦がれ、結ばれたいと思案します

そしてある時、一寸法師は貢ぎ物のお米を茶袋に入れ、その夜米粒を姫の口元に塗り、茶袋を持って泣き出します。

宰相殿はこれを見て訳を尋ねると「私が集めていたお米を姫君が食べてしまわれたのです」と答えました。

宰相殿は怒り、「このような者を都においては置けぬ」というと、法師は答えて「姫は私のものを盗んだのですからその処遇は私にお任せください」と申し上げます。そして思い通りに事が運ぶことに内心限りなく嬉しく思います。

 

鬼ヶ島で鬼退治

屋敷を出た二人は船に乗り、運悪く荒波にのまれ、人が住んでいる気配のない不思議な島に漂着。そこに二匹の鬼がやってきました。

一人は打出の小槌を手に持ち、もう一人は「あの小さいのは一呑みにして、女の方は連れていこう」、そういうと一寸法師を一飲みにしました。

けれど飲み込まれた一寸法師は呑まれては目から出てきて素早く飛びまわります。

これには鬼も恐れをなして、「こいつはただ者ではないぞ。地獄に乱でも起きたようなものだ。逃げるぞ」。そう言い残すと、持っていた打ち出の小槌や杖など、何もかも放り出して、極楽浄土のある暗い北西の方向に逃げて行きます

 

鬼退治のご褒美は

一寸法師は残された打ち出の小槌を打ち、「私の背丈よ、大きくなれ」というと、なんとみるみる大きくなって美しい成人男性となりました。

その後打ち出の小槌で金銀を出し、姫君とともに都に戻ります。

帝に少将に任命され、めでたく堀河の少将と名乗るようになりました。

その後、老いた両親や宰相殿とも再開し、孝行を尽くしています。


御伽草子 上 (岩波文庫 黄 126-1)

 


 

現代でもキャラは変わらない? 一寸法師

鬼灯の冷徹」では「一寸だった法師」元一寸で登場。怒りやすい性格で、すぐに切れるけれど、似たような境遇の桃太郎とは仲が良い。姫を妻にするために周囲を騙した罪で、本来は地獄逝きになるはずが、これまでの境遇や騙された姫が怒っていないことから情状酌量になりました。

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ポルタ文庫「一寸法師と私の共同生活

復讐に燃える一寸法師!?

亡くなった祖父が涼子に遺してくれた古い木箱。そこには一寸法師だと名乗る青年(小さいけれど美形)が入っていた!

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江戸川乱歩の「一寸法師」では一寸法師風の小人が夜な夜な出没し、人の腕を切り落とす猟奇事件が起こり、名探偵明智小五郎がその謎に挑みます。


明智小五郎事件簿2 「一寸法師」「何者」【電子書籍】[ 江戸川乱歩 ]


一寸法師

 

 



一寸法師 まとめ

「鬼灯の冷徹」や江戸川乱歩など、意外と本来の御伽草子の中の一寸法師の物語は、知られていないようで、知る人には知られていたようです。

個人的には子供の夢物語の中の一寸法師よりリアリティがあって親近感を持てますが。。。

 

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