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コボルド、人に奉仕し、予知能力で人を災害から救う醜い妖精

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出典:wikipedia

コボルトでイメージするのは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の「小柄で犬に似た頭の2本足の生物」、臆病でズル賢い雑魚キャラ。

けれど、元々は予知能力を持ったドイツの妖精、あるいは目に見えない精霊。

人間の身近にいて、人の奉仕し共に暮らす伝承が今も語り継がれています。

今回はそんなコボルトのご紹介です。

 

 

コボルト、人の身近にいて人を助ける妖精

ウィリー・ポガニー作

コボルト、コボルド(kobold, cobold)はコーボットとも呼ばれるドイツの民間伝承に登場する醜い妖精、あるいは精霊

ドイツ語( Kobold )で邪悪な精霊を意味し、英語でしばしばゴブリンとも訳されています

また、ギリシア語の「子供」を意味するコバロスKobalosに由来し、イタズラ好きな性格はゴブリンに類似しています。

神話上の超自然的な存在としての伝承もドイツの人々を中心に今も語り継がれています。

精霊としてのコボルトは目には見えない存在ですが、彼らは動物や、火、人間などの姿に実体化することができます。

一般的に人間化した彼らは幼児ほどの大きさであると言われます。

家の精霊として人家に居着く場合もありますが、通常森や地下に住むと考えられており、地域によっては森や山、大地の守り神として扱われています

 

容姿

出典:deviantart

コボルトはさまざまな容姿で語り継がれています

金髪で赤いコートをまとった子供のような外見であったり、赤い帽子に緑の服を着た小人、イギリスでは4足の獣。

 

伝承や神話を専門とする作家アンナ・フランクリンは、コボルトは手がなく、緑か、濃い灰色の肌をして、尻尾と毛深い脚を持つ身長60cmほどの小人。三角形の帽子に先のとがった靴、赤か緑色の服を着た姿であるとしています。

 

コボルトは大きく3種類に分かれます。

人間の家に住んでいるハウスコボルトは農民の服

鉱山に住む人々は猫背で醜く、船に住んでいるコボルドは船員の服を着ています

性格

コボルトの性格はホブゴブリンと似ています。

悪戯好きですがゴブリンほどの悪辣さはありません。

状況によっては人間の手助けをすることもあり、善意には善意で返すような義理堅さもあります。

人間の少年に姿を変え子供達と遊ぶことも多く、基本的には友好的な妖精。

ただし、実態を暴こうとしたり、悪態をつくものを嫌い、その者に対し、死に至る残酷な仕返しをするといいます。

精霊としてのコボルト

コボルトの起源は13 世紀、ドイツの農民がコボルドの人形を彫って家に置いたのが始まりだと言われます。

これは一説にはギリシャ神話に登場する悪戯好きな精霊コバロスに由来していると考えられます。

 精霊としてのコボルトは通常は目に見えませんが、動物、火、人間、ろうそくの形で実体化します。

 

ドイツ北部のペルレベルクの言い伝えによれば、家主がコボルドを家に招くには聖ヨハネの日の正午から一時までの間に森に行き、鳥がいる蟻塚を見つけ、ある言葉を発すると鳥は小さな人間に変身します

そして自ら家主の鞄に飛び込み、家に迎えることができるといいます。

 

人間となったコボルトは、幼児ほどの大きさの小人

炎と化したコボルドは、ドレイク、ドラシュ、プクとも呼ばれます

ドイツペシューレ地方の伝説では「青い縞模様のゴブリン(コボルト)が空を飛び、穀物を運ぶ」

他の伝説では「燃えるようなコボルドが煙突を通って家に出入りする」とも言い伝えられています。

 

伝説によれば、コボルドには主に 3 つのタイプが存在します。

  • まず家に居着く精霊。このタイプの有名なコボルドには、ゴルデマール王、ハインツェルマン、ホーデキン(ヘデキン)などがいます。

ドイツ南部のガルゲンメンライン(絞首台の小人)やケルンのハインツェルメンヒェンなどもコボルトの地域名であるともいわれます。

  • 別の種類のコボルトは鉱山などの地下に出没
  • 3 番目の種類の水のコボルドクラバウターマンは船に住んでいて、船員を助けます



家事仕事もこなす妖精? コボルト

ギュスターヴ・ドレ作

人家に居着くコボルトはホブゴブリンと同じく、夜中に家事を済ませ、報酬として一切れのパンと一杯のミルクを貰います

ある言い伝えでは、彼らの好物はグリッツか水粥だとか。

ただし、贈り物をしないままだとホブゴブリンはその家を去りますが、コボルトはいたずらをして住人を困らせます

 

人家に住み着くコボルドの容姿については様々な伝承が残されています。

農民のような服を着て、4歳児とじくらいの背丈のもの。

アルテブルクの伝説では「少年でも男性でもない、ずんぐりした生き物

ヒルデスハイムのコボルトのヘデキンは、小さな帽子を顔までかぶっています。

ヒュッチェンと言われるコボルドは、身長0.3〜1メートル、赤い髪とひげを生やし、赤または緑の服と赤い帽子

リューネブルク地方のハインツェルマンは、肩までのブロンドの巻き毛を持ち、赤い絹のコートを着た美しい少年

 

劇作家XB・セインティーンは、コボルドは死んだ子供の霊であると述べています。

 

ハウスコボルドは通常、家の囲炉裏周辺に居つきます。あるいは、薪小屋、納屋や厩舎など。

彼らは夜中人間の雑務をこなします。害虫駆除、馬小屋を掃除し、牛や馬に餌を与え、台所の掃除。

コボルドは宿主が世話をする限り、宿主を助けます

 

ウィリー・ポガニー作

アイルランドの歴史家トーマス・キートリーによれば、19 世紀初頭のケルンのパン屋は、ハインツェルメンヘンと呼ばれるコボルドが毎晩パンを作っていたため、職人を雇う必要がなかったという伝承が残されていると述べています。

同様に、ビール貯蔵庫に住んでいるコボルドは、家にビールを持ち込み、テーブルを掃除し、瓶、グラス、樽を洗います

サターランドと東フリースラントの伝説では、アルルーンと呼ばれる身長が約1フィートしかないコボルトは、ライ麦を大量に運ぶことができ、ビスケットと牛乳の食事を与えられる限り毎日そうしていたと伝えられています。

 

コボルドのこれらの伝承から、19世紀のドイツでは働き者の女性は「コボルドを持っている」といわれたという言い伝えも残されています。

 

中世には、コボルトは住み着いた家に幸運をもたらす精霊として認識されます。

家族が裕福になるのはその家にコボルドが居着いたためという伝承も生まれます。

 

但しこうしたハウスコボルドは人間がタブーを破るとその家を去ってしまいます

そしてその家は運気が低迷してしまいます

 

ウィリー・ポガニー作

コボルトには予知能力があり、家の人に警告したりもすることがあるとも伝えられています。

ゴルデマール王、ハインツェルマン、ヘデキンという3人の有名なコボルドは皆、住んでいる家主に危険が迫っていることの警告を与えています

ハインツェルマンは主人に日々の狩猟に注意するよう警告。主人はその忠告に従わず銃が逆噴射して親指を撃ち落としてしまいます。

12世紀にヒルデスハイムの司教の元のヘデキンは司教に殺人を警告。

司教はその警告に従い、殺人者の土地を接収し、司教領に加えることになりました。

 

けれど、注意すべきは決してコボルドを嘲笑したり笑ったりせず、敬意を持って扱わなければならないということ。

歴史家トーマス・キートリーは、コボルトのいる家に雇われていたメイドは、コボルドを大切にするように後継者に警告しなければならないと述べています

軽視されたコボルドは非常に悪意と復讐心を持つようになり家主を病気や怪我で苦しめます

彼らは侮辱するものを殴ることから殺害するまでに至ります。

ある貴族がハインツェルマンの家を訪れ、コボルドの名誉のために酒を飲むことを拒否したため、ハインツェルマンはその男を窒息死させそうになったといわれます。

 

また、使用人がコボルドのヘデキンに泥をつけ、彼が現れるたびに水を吹きかけたときヘデキンは召使が眠りにつくのを待って、残虐な殺害方法で死に至らしめています。

 

ハインツェルマン

ドイツケルンの有名なコボルト。

赤毛で顎髭のある、緑か赤の帽子に赤い服を着た小人

猫やコウモリ、蛇、おんどりなどに化けることもあるといわれます。

夜には家業を手伝う、素晴らしく働き者で優れた腕の持ち主

 

けれど、姿を見られるのが嫌い、無理に姿を見ようとするとその家を去り、二度と寄り付かなくなります

また服を与えようとする行為は彼らにとって侮辱となります。

 

その伝承に

1584 年フンデルミューレン城に居着いたコボルドのハインツェルマンは戸口をノックし自分の存在を知らせました。

家人は冷たくて濡れたコボルドを憐れんで家の中に招き入れます。

 

城主はある夜、コボルドを説得して触らせてもらいます。

その指は子供ほどの大きさで、体温がなかったと伝えられています。

 

ゴルデマー王

1850 年にトーマス キートリーに記録された伝説では

 

ゴルデマール王はハウスコボルド、ハルデンシュタイン城でネヴェリング・フォン・ハルデンベルクと一緒に暮らしていました。

彼はネベリングを「義理の兄弟」と呼び、しばしば彼のベッドで共に寝るほどの交流を持ちました

ゴルデマールはネベリングの家に幸運をもたらし、要求したのは自分のためのテーブル席と自身と動物たちの食事。

ゴルデマール王はネヴェリングの求めで自分の存在を感じさせることを許しています。

トーマス キートリーは「彼の手はカエルのように薄く、冷たくて柔らかな感触だった」と記述しています。


 

鉱山に住むコボルド

出典:deviantart

コボルトは人家だけでなく鉱山にも居つきます。

皴のよった小さな顔で、尖ったフードの付いた服を着たノームに似た妖精

16 世紀、鉱山に住むコボルドはドイツの鉱山労働者の間で信じられていた存在でした。

鉱夫たちはコボルトは岩の中に住む妖精で、熟練の鉱山労働者や金属細工師であると信じていました。

 

そして、通路をうろつき何かを叩くような音を立てるといいます。

鉱夫達はその音を聞いたらすぐに避難しなければなりません

この音は不吉なことが起こる前兆なのです。

落盤や出水、爆発などの災害が起こる前触れ、地盤の緩みや地下水の流れの異変などが原因しているのです。

 

また、 19世紀のボヘミアとハンガリーの鉱山労働者は、鉱山内でのノック音はその方向に行かないようにというコボルドからの警告であると解釈しました。

逆に、他の鉱夫の間では、ノックは鉱脈が見つかる場所を示しており、ノックが多ければ多いほど、鉱脈は豊富であるというメッセージであるとも信じられていました

 

鉱山でのコボルトはそんな大切な役割を果たしていますが、銀を見つけるとそれを盗み、その代わりに当時は無価値で有害な毒素を含む「コバルト」を置いてゆくという困った行いもしています

 

伝説では、地下のコボルドを邪悪な生き物としても解釈されていました。

彼らは事故や陥没、岩盤崩落の原因であると考えられていました。

またコボルドは、鉱夫に価値のない鉱石を発掘させます。

16世紀の鉱山労働者は、銅や銀の鉱脈に見えるものを発掘。けれど製錬すると汚染物質にすぎないもの。彼らはこの鉱石を、コボルトに因んでコバルトと名付けます

 

コバルトの語源にもなったコボルト

「金属元素コバルト(Co/Cobalt)」の名称は、この妖精コボルトに由来します。

コバルトは現在は「コバルトブルー」を生み出す鉱物として役立てられています。

けれど、その金属は大変硬い性質を持ち、当時の工具では冶金加工が非常に困難であったため、16世紀頃のドイツの鉱夫たちの間では「コボルトが人間を困らせるために魔法をかけた石」として信じられていました。

 

船の精霊

クラバウターマンは海上の船に住むドイツの民間伝承の精霊。

ドイツ北海岸、オランダ、バルト海の漁師や船員の信仰に由来する水の精霊、コボルトです。

船上に住む目に見えない存在ですが、船長に危険を警告する、イタズラ好きな妖精

 

クラバウターマンへの信仰は1770 年代にまで遡ります。

伝統によれば、彼は船倉を寝ぐらに、板を叩いたり、積み上げたりもします。

船上では騒音によってその存在を知らしめます。

外見は船乗りのよう。ハンマーとパイプ、赤い髪と緑の歯を持ちます

あるいはパイプを持ち、水兵帽をかぶった黄色の服の小さな船員。

彼は時として甲板に出没、マストや艤装に登り帆船のバウスプリットやジブブームに座ります。

 

彼は船が損傷をおったとき船の沈没を防ぐために特に役立つと考えられていました。

船倉から水を汲み上げ、穴をハンマーで叩き、損傷部分を塞ぎます。

 

けれど19 世紀には船乗りの間で、彼が姿を表すとき、それは最も恐れられていた光景でした。

彼は死を目前に控えた者の前にのみ現れる。船が沈む運命にある場合にのみ姿を現すと言い伝えられていたのです。

そのため、古い船乗りの習慣では、クラバウターマンが姿を表さないよう船内にニワトリが飼われていました

 

19 世紀の迷信深い船員たちは、クラバウターマンに最高の敬意を払います。

ドイツのジャーナリスト・ハインリヒ・ハイネは、ある船の船長は自分の船にクラバウターマンのために船室を作り、クラバウターマンに最高の食べ物と飲み物を提供したと報告しています。

 

作品の中のコボルト

アンドリュー・ラング『青い妖精の本』

コボルドはドイツの芸術家によって様々な作品

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテは『ファウスト』の中で、四大元素を司る四大精霊のひとり、土の元素を指すものとして登場させています。

ジークフリート・ワーグナーも彼の3番目のオペラとして「デア・コボルド」を1903年に完成させています。

 

ルンペルシュティルツヒェン

これは『グリム童話』に収録されている作品です。

 

あらすじ

ある貧しい粉引きが、その国の王に「うちの娘は藁を紡いで金に変えることが出来る」という嘘で王に取り入ります。

王は娘との婚儀を条件に3日の間に藁を金に変えるよう命じ、塔の上に糸車と藁とともに娘を幽閉

娘が泣いていると毎夜小人が現れ、自分の望むものと引き換えに金を紡ぐこと約束します。

娘は拒みますが、処刑が迫る最後の晩、小人は最初に生まれる子供と引き換えに藁を金に変えると迫り、娘はやむなく承諾

コボルトは藁を金に紡ぎ、王妃になった娘に最初の子が生まれると、赤ん坊を奪いに小人が現れます。

悲しむ王妃の懇願を受け、小人は「3日のうちに自分の名前を当てられたら子供を連れて行かない」と約束。

 

 

コボルト、ファンタジーの世界ではご多忙

ダンジョンズ&ドラゴンズ」でのコボルドは臆病者で、闇の中をこそこそ歩き、強い敵からは隠れ、弱い敵はよってたかって叩きのめそうとする雑魚キャラ。罠を設置したり、待ち伏せを得意技としています。

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ファイナルファンタジー14」では蛮族として登場。

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TVアニメ「ソードアート・オンライン」では可愛い「獣屠りし者」コボルドアスナとして登場しています。

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コボルト まとめ

出典:deviantart

いつの間にか犬キャラのイメージが定着してしまったコボルト。

けれど、鉱夫や水夫に危険を知らせたり、健気に働くコボルトの姿は、人間の身近に居るありがたい妖精。

 

昔の人のように、伝承の中にある生物を信じていたいと思う存在です。

 

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