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小野小町、女心をうたう、驚きの小町伝説とは。絶世の美女の哀しい末路

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出典:deviantart

絶世の美女と謳われた小野小町。クレオパトラや楊貴妃と並ぶほどの美貌の持ち主として有名です。

歌人としても名をあげ、多くの浮名を流した華やかなリア充であったとイメージします。けれど晩年は乞食にまで身をやつしたという言い伝えも残されているんです。

そんな才色兼備な平安の美女、小野小町に注目です。

様々に伝えられるオドロキな小町伝説とは。

 

 

小野小町、女心を切々と詠う、恋多き(?)伝説の女流歌人

鈴木春信 作

小野小町は平安前期(9世紀ごろ)の女流歌人。百人一首9番の作者で、六歌仙、三十六歌仙のひとりです。

第54代仁明天皇から、文徳、清和の三代 (830年~880年頃)の、天皇の後宮(皇后や妃)に仕えた女房(当時の女房は女性の使用人の意味)。あるいは仁明天皇の更衣(父親が身分の高くない天皇の后)だったという説も残されています。

美貌の歌人。多くの謡曲(能楽作品)・歌舞伎の題材となった美女としても知られています。

詳しいことは不明とされていますが、出生地は当時の出羽国、秋田県湯沢市。

日本初期の系図集『尊卑分脈』(そんぴぶんみゃく)に、郡司・小野良真の娘と記されています。

平安前期の勅撰(天皇や上皇の命により編纂された)和歌集『古今和歌集』にも18首が入集。

女性の視点から詠んだ情熱的な恋の歌は、平安女流文学の原点とも評されています

 

様々に語り継がれる小野小町 

歌川豊国 作

小野小町はその人間像がさまざまに説話化され、語り継がれています

歌人として『伊勢物語』(和歌にまつわる説話を集成した平安初期の物語)に作品が取り上げられたことから、恋多き女性というイメージが出来上がったものと推測されています。

また、平安の貴族であり歌人でもある在原業平との恋愛譚がモデルとなったとされる古詩『玉造小町壮衰書』。その中の小町と推測される主人公は老いさらばえ、悲惨な最期を遂げており、それが驕慢な美女がついには髑髏(どくろ)となるという小町伝説に繋がっていると考えられます

 

** 「百夜通い」 **

歌川国芳 作

小野小町の多くのエピソードの中で特に有名なのが、深草少将の「百夜通い」

これも後の能作者たちが創作した小野小町伝説のひとつです。

あらすじは

小野小町に恋い焦がれる深草少将(室町時代の能作者の創作)という貴族がいました。小町は少将を諦めさせるため「私のもとへ百夜通い続けられるならその愛を受け入れます」と告げます。少将はその日から小町宅へ毎晩通い続けます。けれど99日目の雪の夜、思いを遂げられないまま無念にも息絶えてしまいます。

 

一説には少将のモデルとなった人物は実在したといわれ、同じく六歌仙のひとり、僧侶で歌人の遍昭(へんじょう、816~890)が有力視されています。

また、深草少将(ふかくさのしょうしょう)は、実際に京都市伏見区にある欣浄寺、深草の里に屋敷があったともされています。

 

** 小町伝説 **

月岡芳年 作 『月百姿』

情熱的な数々の恋の歌を残した小野小町。けれど、実際の小町は生涯異性との性交渉がなかったもといわれています

い寄る多くの男になびかず、そのため穴のない女「穴(膣)なし」と噂されたとも。
裁縫道具で穴が無い針を「マチ針」といいますが、これは「小町針」に由来するものであるといわれています。

小野小町を描いた物語の多くで、晩年は落ちぶれて各地を放浪し、最期は行き倒れになったといわれます。けれどその一方で、小町は長命であったとも伝えられています。

故郷の東北に帰り、静かな余生をおくった。「百夜通い」で亡くなった少将を弔いながらも90歳近くまで生きたなど、平穏な晩年を描いた説話も多く残されています

ちなみに

京都左京区の安楽寺には、小野小町を描いた掛け軸「小野小町九相図」があります。

生前相、新死相、膨張相、血塗相、肪乱相、青瘀相、噉色相、骨連相、古墳相の9つの相で、絶世の美女と謳われた姿から白骨となるまでの様子が描かれています。

 

小野小町の物語はその歌才、容貌からさまざまな伝説が生まれ,小町物と呼ばれる謡曲に集大成されています。

 

** 小町物、七小町 **

月岡耕漁 作 「通小町」

小町伝説の中で特に有名な七つの謡曲(能楽作品)を七小町(ななこまち)といいます。

  • 草子洗小町 歌合せに小町が出した歌を、相手方の大伴黒主が『万葉集』にある古歌であると非難。小町はそのからくりを解いて、自害しょうとする相手を許し、祝言の舞を舞います。
  • 雨乞小町  小町が雨乞いの和歌を詠じ、この歌で大雨が降ったという話。
  • 清水小町  京都清水寺の音羽の滝と、小町に見立てる美人とを取り合わせ
  • 通小町  小町を恋した深草少将が九十九夜で亡くなった話
  • 鸚鵡小町  年老いた小町が帝からの憐れみの歌に、返歌を奉答「鸚鵡(おうむ)返し」、才気の冴えを見せます。
  • 関寺小町  老衰した小町が、近江国関寺付近に居住、寺の稚児に和歌を説き、七夕祭に招かれます
  • 卒都婆小町  老衰零落した小町が旅僧と出会います。深草少将の霊が小町に憑き、ふたりの恋物語を語り、仏果を得ます。

哀しい女心を切々と詠う、小野小町の作品

狩野探幽 作 『三十六歌仙額』

小野小町の作品の特徴は哀しい女心を読んだ歌であるところ。

 

「花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに」

花の色は、むなしく衰え色あせてしまった。恋や世間のもろもろのことに思い悩んでいるうちに。

「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」

あの人のことを思いながら眠ってしまったから夢で逢えたのだろか? 夢とわかっていれば目覚めなかったのに

「うたたねに恋しき人を見てしより 夢てふ物は思みそめてき」

うたた寝で恋しい人を見てから、夢というものを当てにするようになってしまった

「いとせめて恋しき時はむばたまの 夜の衣を返してぞきる」

とても恋しく思う夜は、おまじないに頼って、夜着を裏返して眠ります

「秋の夜も名のみなりけり逢ふといへば 事そともなく明ぬるものを」

秋の夜長も名前だけ。愛しいあなたと一緒にいれば、もう、すぐに朝になってしまう

「月影に我が身をかふるものならばつれなき人もあはれとや見む」

月の光に変わることができたら、つれないあの人も魅入ってくれるだろうに


 

小野小町、現代でもまんま歌姫

女性アイドルグループ『小野小町』、2019年9月デビューです。メンバーは小西麗菜、山川紗希、福島彩菜、坂中楓の4人。歌以外、日舞、殺陣など和風エンターテインメントを披露します。

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杉田 圭著「超訳百人一首 うた恋い。」

はるかな昔から、歌い継がれ、愛されてきた百人一首。 藤原定家が選定した百の和歌には、現代の私たちも共感できる 普遍的な“人の思い"がみごとに詠みこまれている。 とりわけ、「恋」の和歌にこめられた思いは、驚くほど昔も今も変わらない。 そんな百人一首の深い魅力を、恋の歌を中心に、コミックと超訳でわかりやすく お届けします。

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出典:neoapo.

アニメ「おじゃる丸」に登場する小野小町、通称「小町ちゃん」はカズマと同じ小学校に通う少女。ナルシストで彼女が魅力を感じたものを絶賛するとなぜか月光町で大流行します。

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小野小町 まとめ

出典:deviantart

小野小町の歌は驚くほど今の女心と共通します。

一途に人を慕う気持ちは、時代なんか超越してしまうのかもしれません。

女性なら誰もが持つ性(さが)を詠う、その一言で熱い想いが胸いっぱいに伝わります。

 



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